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ひとりごち

大河は、芸術家になれないレベルでの芸術家気質を持った理論屋なんですよね。相反した気質を内包しているので自分の人生の背骨に対して少し舌っ足らずなんです。


自分の中の矛盾にわかりやすく苦しむのが大河で、一方その苦しみを甘受しているのが京也です。


一見京也のほうが格好いいと感じるかもしれませんが、現実的には教師という安定した道を選んでいる大河のほうが数百倍まともで社会的信用度も高いわけですからモテるんですよ。本人にとっては、それが窮屈かもしれませんが。


一方で作家という道を選んだ京也は失っているものが多い。失ったものをもう二度と見ることがないかもしれないし、仮に回収できたとしてもかかる年月が読めない。

だから彼はいつまでも酒と煙草という名の自傷行為を辞められないんですね。


獲得する際に生じる副作用に悩む人生を選ぶのか、失うことに対する恐怖心(一種の共感性)を手放していく人生を選ぶのか。


似ているようで似ていない。

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